Chapter 1
三角関数
1.1 円周率
すべての円は、お互いを拡大もしくは縮小した関係にある。
l
1
d
1
C
1
l
2
d
2
C
2
k
C
2
が、円 C
1
k 倍に拡大したものだとすると、その直径や円周も C
1
k 倍となる。
d
2
= k · d
1
l
2
= k · l
1
この 2 つの式を各辺どうし割ることでk が約分されて消え、直径と円周の比が等しくなること
わかる。
d
2
l
2
=
d
1
l
1
1
2
CHAPTER 1.
三角関数
円の直径と円周の比
すべての円において、直径と円周の長さの比は一定である。
そして、この一定の比率は、円周率 π として知られている。
円周率 円の円周の長さ l と直径の長さ d の比を、円周率といい、π で表す。
π =
l
d
= 3.14 . . .
π の定義式を変形すると、円周の長さを求める式が得られる。
半径を r とすると、直径 d = 2r であるから、
l = π · d = 2πr
円周の長さ 円の円周の長さ l は、半径 r を使って次のように表される。
l = 2πr
1.2 直角三角形の相似
ある図形のすべての辺を r 倍したとき、元の図形と r 倍後の図形は相似であるという。
a
b
c
ra
rb
rc
元の図形の辺の比を a : b : c とすると、r 倍後の図形の辺の比は ra : rb : rc = a : b : c となる。
このように、相似な図形には「辺の比が等しい」という性質がある。
1.2.
直角三角形の相似 3
1.2.1 2 つの角が一致する三角形同士は相似
三角形の内角の和は 180
であるから、2 つの角の大きさが等しければ、もう 1 つの角の大きさも
等しくなる。
つまり、2 つの角の大きさが一致する 2 つの三角形は、辺の間の角度は変わらず、各辺の長さを一
定倍したものなので、相似といえる。
「辺の間の角度がすべて同じ」ことと「各辺の長さが一定倍されている」ことがうまく結びつ
ない人は、次の図を見てみよう。
もしも辺の長さの拡大率が辺によって異なるとしたら、辺の間の角度を変えない限り、頂点と
て辺同士を結ぶことができない。
ra
Rb
rc
ra
Rb
rc
無理やり三角形に…
1.2.2 1 つの鋭角が一致する直角三角形同士は相似
ある 1 つの角が直角である三角形を、直角三角形という。
2 つの角が一致する三角形同士が相似であるなら直角三角形の場合は、1 つの鋭角が一致するだ
けで相似であることがわかる。
nb
nc
na
mb
mc
ma
b
c
a
つまり、鋭角が等しいすべての直角三角形は、お互いを拡大もしくは縮小した関係(互いに相
の関係)にあり、3 辺の比も等しくなる。
4
CHAPTER 1.
三角関数
言い換えれば、
直角三角形の 3 辺の比は、1 つの鋭角の大きさで決まる
ということになる。
1.3 直角三角形による測量
直角三角形では、3 辺の比の値が 1 つの角によって決まる。
角度が同じであれば比の値は一致するので、小さな直角三角形で角度に応じた辺の比の値を計
しておけば、同じ角度を持つ大きな直角三角形でも同じ比の値を使って計算できる。
これによりとえば建物の高さを直接測らなくても、視点からの距離と見上げる角度を使って、
建物の高さを計算で求めることができる。
視点
建物の高さ
視点からの距離
見上げる
θ
比の値
(
θ
)
=
建物の高さ
視点からの距離
建物の高さ = 視点からの距離 × 比の値
(
θ
)
辺の比の値は角度によって決まるため、関数の記号を真似て 比の値
(
θ
)
と書いている。
比の値
(
θ
)
(たとえば同じ角 θ を持つ小さな三角形で)事前に求めておけばこのような測量
に利用することができる。
実際に直角三角形の辺の比の値を角度の関数とみて、その対応関係や値を調べてみることで
にもさまざまな応用先が見つかるのではないだろうか。
その発想の第一歩が、三角比という概念である。
1.4.
三角比 5
1.4 三角比
直角三角形 3 辺の比の値を角度の関数として見つめ直すにあたって3 辺すべての比を一度に
えようとすると、比の値(分数)が複雑になって扱いづらい。
c
a
b
θ
a : b : c
そこで、2 辺ごとに長さの比を考えることにする。
2 辺ずつの比の組み合わせは 6 通りあり、それぞれの比の値に名前がつけられている。
a : b : c
c a の比
c : a =
c
a
sec ant
a : c =
a
c
cos ine
b c の比
c : b =
c
b
cosec ant
b : c =
b
c
sin e
a b の比
a : b =
a
b
cot angent
b : a =
b
a
tan gent
これらをまとめて三角比という。
6
CHAPTER 1.
三角関数
特に重要なのは sin, cos, tan 3 つであり、他の 3 つはこれらの逆数として表されるのであまり
使われることはない。
三角比は、1 つの鋭角 θ の大きさによって決まるので、比の名前に基準となる角 θ をつけて表記
する。
θ
c
a
b
cos
tan
sin
cos θ =
a
c
sin θ =
b
c
tan θ =
b
a
1.5 扇形の弧長と角
1.5.1 扇形の弧の長さ
1.5.2 扇形の弧長と半径による中心角の表現