Chapter 1
フーリエ解析
1.1 波の 2 つの捉え方
波は 2 つの捉え方ができる。
空間的に捉える波:波の形そのもの
時間的に捉える波:波の振動
1.1.1 空間的に捉える波
波とは、一定の間隔で同じ形が繰り返されるものである。
空間的に捉える波は、まさにその波の形そのもので、波の形を位置 x の関数として表す。
波長 波を構成する最小パターンの幅を波長と呼び、λ で表す。
周期関数 次の式を満たす関数 f (x) を、周期 λ の周期関数という。
f (x + λ) = f (x)
1
2
CHAPTER 1.
フーリエ解析
波数 2π の長さに含まれる、波の最小パターンの数を波数という。
k =
2π
λ
1.1.2 時間的に捉える波
波を時間軸から見たとき、波を構成する最小パターンは幅ではなく時間である。
その最小パターンを周期と呼ぶ。
周期は、波を時間軸から見たときの「波長」の言い換えともいえる。
周期 波が 1 回振動するのにかかる時間を周期と呼び、T で表す。
周期関数 次の式を満たす関数 f (t) を、周期 T の周期関数という。
f (t + T ) = f (t)
周波数(振動数)
単位時間に含まれる、波の最小パターンの数を周波数という。
ν =
1
T
これは、単位時間に何回振動するかを表すため、振動数とも呼ばれる。
1.2.
角周波数と正弦波 3
1.2 角周波数と正弦波
角周波数 動径が単位時間内に進む角を角周波数と呼び、ω で表す。
任意の時間における動径
時間が t だけ経過したときの動 θ は、角周波 ω を使って次のように表すこと
できる。
θ = ωt
sin θ cos θ は、θ = ωt の関係を用いると、動径 θ ではなく角周波数 ω の関数とみることができる
正弦波 sin ωt cos ωt を、角周波数 ω の正弦波と呼ぶ。
1.2.1 角周波数と振動数の関係
円の 1 周は 2π であり、単位時間あたりに進む円周は角周波数 ω である。
(角周波数は「角」の大きさとして定義したが、弧度法のおかげで、「円周」の長さとしても捉えられる。
ここで、単位時間あたりに進む円周 ω は、1 2π のうちのどれくらいだろうか?
その答えは、ω を「1 周あたりの量」2π で割ったものになる。
角周波数と円周の関係
角周波数 ω で動径が回転するとき、その動径は単位時間に
ω
2π
だけ円を回ることになる。
ここで、三角関数は円関数とも呼ばれるように、円の 1 周は三角関数の 1 振動に対応する。
4
CHAPTER 1.
フーリエ解析
振動を円周上の回転として表す三角関数のおかげで、「どれくらい回るか?」「どれくらい振動
するか?」とみることができる。
つまり、動径が単位時間
ω
2π
だけ回転するということは、単位時間に
ω
2π
だけ振動するという
とだ。
角周波数と振動数の関係
角周波数を ω とすると、振動数 ν は次のように表せる。
ν =
ω
2π
1.2.2 角周波数と周期の関係
ここまでで、振動数 ν 2 通りの表し方ができることがわかった。
ν =
1
T
(周波数:単位時間に含まれる、最小波の時間幅)
ν =
ω
2π
(振動数:単位時間に含まれる、振動の回数)
この 2 式を組み合わせて、次のような関係が得られる。
ω = 2πν =
2π
T
角周波数と周期の関係
角周波数を ω、周期を T とすると、次のような関係が成り立つ。
ω =
2π
T
1.3 偶関数と奇関数
sin 関数と cos 関数は、どちらも正弦波と呼ばれるが、その性質は異なる。
sin は奇関数であり、cos は偶関数である。
この違いが、後に議論するフーリエ級数展開においても重要な役割を果たす。
1.3.
偶関数と奇関数 5
1.3.1 偶関数と奇関数は異なる対称性を持つ
偶関数
グラフが y 軸に対して対称な関数を偶関数と呼ぶ。
偶関数は、任意の x に対して次の関係が成り立つ関数として定義される。
f (x) = f (x)
奇関数
グラフが原点に対して対称な関数を奇関数と呼ぶ。
奇関数は、任意の x に対して次の関係が成り立つ関数として定義される。
f (x) = f (x)
x
y
偶関数: f (x) = f (x)
x
y
奇関数: f (x) = f (x)
1 つの関数が、この両方の性質を持つことはない。
つまり、偶関数であり奇関数でもある関数は存在しない。
6
CHAPTER 1.
フーリエ解析
1.3.2 積に関する性質
偶関数と奇関数の積 偶関数と奇関数の積は、奇関数となる。
Proof: 偶関数と奇関数の積
f (x) を奇関数、g(x) を偶関数とすると、
両辺 1 倍して両辺入れ替え
f (x)g(x) = f (x)g(x)
f (x)g(x) = f (x)g(x)
となり、引数を 1 倍すると符号が反転するため、 f (x)g(x) は奇関数である。
奇関数どうしの積 奇関数と奇関数の積は、偶関数となる。
Proof: 奇関数どうしの積
f (x), g(x) を奇関数とすると、
f (x)g(x) = f (x) · {−g(x)}
= f (x)g(x)
となり、引数を 1 倍しても符号がそのままなので、 f (x)g(x) は偶関数である。
偶関数どうしの積 偶関数と偶関数の積は、偶関数となる。
Proof: 偶関数どうしの積
f (x), g(x) を偶関数とすると、
両辺入れ替え
f (x)g(x) = f (x)g(x)
f (x)g(x) = f (x)g(x)
1.3.
偶関数と奇関数 7
となり、引数を 1 倍しても符号がそのままなので、 f (x)g(x) は偶関数である。
1.3.3 和に関する性質
奇関数どうしの和 奇関数と奇関数の和は、奇関数となる。
Proof: 奇関数どうしの和
f (x), g(x) を奇関数とすると、
両辺 1 倍して両辺入れ替え
f (x) + g(x) = f (x) g(x)
= −{ f (x) + g(x)}
f (x) + g(x) = −{ f (x) + g(x)}
となり、引数を 1 倍すると符号が反転するため、 f (x) + g(x) は奇関数である。
偶関数どうしの和 偶関数と偶関数の和は、偶関数となる。
Proof: 偶関数どうしの和
f (x), g(x) を偶関数とすると、
f (x) + g(x) = f (x) + g(x)
となり、引数を 1 倍しても符号がそのままなので、 f (x) + g(x) は偶関数である。
8
CHAPTER 1.
フーリエ解析
1.3.4 偶関数・奇関数の積分
偶関数の積分公式
原点に関して対称な区間 a x a において、 f (x) が偶関数なら、次の式が成り
立つ。
a
a
f (x)dx = 2
a
0
f (x)dx
x
y
a
a
O
奇関数の積分公式
原点に関して対称な区間 a x a において、 f (x) が奇関数なら、次の式が成り
立つ。
a
a
f (x)dx = 0
x
y
O
a
a
1.4.
直交関数系としての三角関数 9
1.4 直交関数系としての三角関数
sin は奇関数であり、cos は偶関数であることから導かれる、sin cos の重要な性質がある。
1.4.1
関数の内積と直交関数系
ベクトルの内積は、次のように定義されていた。
a · b =
n
i
=
1
a
i
b
i
ここで、離散的な和
を、連続的な足し合わせ
に置き換えることで、この内積の定義を関数に
拡張する。
f, g =
b
a
f (x)g(x)dx
このように拡張して定義された関数の内積は、ベクトルの内積と同様の性質を持つことが知られ
ている。
関数の内積
2 つの関数 f (x) g(x) の内積を以下のように定義する。
b
a
f (x)g(x)dx
ベクトルの内積では、2 つのベクトルが直交しているとき、その内積は 0 になる」という性質が
あった。内積 0 というのは、「互いに共通な成分を一切持たないということであり、図形的に
2 つのベクトルのなす角が直角であることを意味していた。
関数の内積においても、「異なる関数どうしの内積が 0 であれば、2 つの関数は直交している」と
表現しよう。
関数の直交性
関数が 直交 しているとは、自身以外との内積が 0 であることをいう。
そして、互いに直交する関数の集合は、直交関数系と呼ばれる。
10
CHAPTER 1.
フーリエ解析
直交関数系
関数の集合 { f
n
(x)} が直交関数系であるとは、任意の n , m に対して
b
a
f
n
(x) f
m
(x)dx = 0
が成り立つことをいう。
直交関数系は、基底としての役割も果たす。
直交しているベクトルを基底ベクトルとして使うことで、基底ベクトルの一次結合で他のベクト
ルを表現できるのと同じように、直交関数系を使うことで、関数を「直交基底関数の一次結合
して表現できる。
1.4.2 sin cos の直交性
1sincos という 3 つの関数は、直交関数系をなすことが知られている。
実際に内積を計算することで、その事実を確認してみよう。
sin どうしの内積
sin どうしの内積 mn を正の整数とするとき、次の式が成り立つ。
2π
0
sin mx sin nx dx =
π
(
m
=
n
)
0 (m , n)
cos どうしの内積
cos どうしの内積 mn を正の整数とするとき、次の式が成り立つ。
2π
0
cos mx cos nx dx =
π (m = n)
0 (m , n)
1.5.
フーリエ級数 11
sin cos の内積
sin cos の内積 mn を正の整数とするとき、次の式が成り立つ。
2π
0
sin mx cos nx dx = 0
1 どうしの内積
1 どうしの内積 mn を正の整数とするとき、次の式が成り立つ。
2π
0
dx = 2π
1.5 フーリエ級数
1.5.1 そもそも級数とは
級数展開
ある関数 f (x) を、より基本的な関数系
{φ
0
(x ), φ
1
(x ), φ
2
(x ), . . . }
を使って、次のような級数で表すことを級数展開という。
f (x) =
n=0
c
n
φ
n
(x)
級数展開は、近似や性質の分析に役立つ。
12
CHAPTER 1.
フーリエ解析
代表的な級数展開:マクローリン展開
f (x) が無限回微分可能なとき、 f (x) は多項式関数 {x
0
, x
1
, x
2
, . . . } を使って級数展開できる。
f (x) =
n=0
f
(n)
(0)
n!
x
n
このような級数展開をマクローリン展開という。
代表的な級数展開:フーリエ級数展開
f (x) が特定の条件を満たすとき、 f (x) は三角関数を使って級数展開できる。
このような級数展開をフーリエ級数展開といい、これからの議論の対象となる。
1.5.2 有限区間で定義された関数のフーリエ級数展開
有限区間で定義された関数のフーリエ級数展開
T
2
t
T
2
(区間幅 T の有限区間)で定義された関数 f (t) について、
f (t) =
フーリエ級数展開
a
0
+
n=1
a
n
cos
2πnt
T
+ b
n
sin
2πnt
T

が成り立つとしたら、フーリエ係数 a
0
, a
n
, b
n
は次のようになる。
a
0
=
1
T
T
2
T
2
f (t)d t
a
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) cos
2πnt
T
dt
b
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) sin
2πnt
T
dt
1.5.
フーリエ級数 13
1.5.3 フーリエ級数展開の周期関数への拡張
元の関数 f (t) は区間の制限を設けていたが、フーリエ級数を構成する三角関数は、無限区間で
定義されている。
そして、三角関数は、区間幅 T だけずらしても同じ値をとる、周期 T の周期関数である。
つまり、特定の区間内の関数 f (t) の形を、無限区間内で T ずつずらしていっても、それを表現す
るフーリエ級数の式は変わらない。
関数 f (t) が、区間の制限をなくしても同じ形を繰り返すだけ(周期関数)あれば先ほどのフー
リエ級数展開がそのまま成り立つことになる。
周期関数のフーリエ級数展開
周期 T の周期関数 f (t) について、
f (t) =
フーリエ級数展開
a
0
+
n=1
a
n
cos
2πnt
T
+ b
n
sin
2πnt
T

が成り立つとしたら、フーリエ係数 a
0
, a
n
, b
n
は次のようになる。
a
0
=
1
T
T
2
T
2
f (t)d t
a
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) cos
2πnt
T
dt
b
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) sin
2πnt
T
dt
1.5.4 不連続点におけるフーリエ級数の値
次のような矩形波 f (t) では、t =
T
n
が不連続な点となる。
f (t) =
0 (π t < 0)
1 (0 t < π)
14
CHAPTER 1.
フーリエ解析
y
t [s]
T
2
T
2
TT
T
2
T
2
3
T
2
3
T
2
2T2T
5
T
2
5
T
2
A
A
O
この関数をフーリエ級数展開し、k 項までの和を求めた結果が、s
k
のような波形となる。
y
t [s]
s
1
s
3
s
5
s
7
T
2T
A
A
O
k が大きくなるほど、s
k
は元の矩形波 f (t) に近づいていることがわかる。
ここで、元の関数の不連続点である t =
T
n
において、s
k
は不連続点を通過している。
例えば、t = 0 において、t = 0 より左側では A に近い値、右側では A に近い値をとる。
t = 0 に右から近づいていくと、s
k
A に近づいていく(右極限は A
t = 0 に左から近づいていくと、s
k
A に近づいていく(左極限は A
そして、t = 0 において、s
k
A A の間の値(原点)を通過している。
一般に、不連続となる t において、フーリエ級数展開の値は、その点での左右の極限値の平均値と
なる。
不連続点におけるフーリエ級数の収束
f (t) t = a で不連続のときフーリエ級数の値は左極限 f (a 0) と右極限 f (a + 0)
の平均値に収束する。
lim
ta
s
k
(t) =
f (a 0) + f (a + 0)
2
1.5.5 フーリエ級数展開の意味
フーリエ級数展開の式は、
1 の係数が a
0
1.5.
フーリエ級数 15
cos
2πnt
T
の係数が a
n
sin
2πnt
T
の係数が b
n
となっていた。
フーリエ級数展開は、次の基本関数系を使った級数展開といえる。
1, cos
2πnt
T
, sin
2πnt
T

ここで、
REVIEW
sin ωt cos ωt は、角周波数 ω の正弦波と呼ばれる
ことを思い出すと、フーリエ級数展開を構成する基本関数系は、角周波数 ω
n
=
2πn
T
の正弦波で
ある。
1 cos
2πnt
T
における、n = 0 の場合だと考えることができる。
つまり、フーリエ級数展開は、関数 f (t) を角周波数 ω
n
の正弦波に分解することである。
t [s]
y
TT
2T2T
時間の世界(連続的)
b
n
f
n
1
s
周波数の世界(離散的)
11
T
9
T
7
T
5
T
3
T
1
T
関数 f (t ) がどのような周波数成分で構成されているか?を解き明かすのがフーリエ級数展開で
フーリエ係数は時間領域から周波数領域へのマッピングの役割を果たしている。
1.5.6 フーリエ級数展開のさまざまな表現式
フーリエ級数展開の式は、文献によって異なるいくつかの形で表現される。
16
CHAPTER 1.
フーリエ解析
定数項をまとめた表現
定数項 a
0
を、a
n
n = 0 の場合として考えることができる。
その場合、フーリエ級数展開は次のように表される。
フーリエ級数展開(フーリエ係数を整理した表現)
周期 T の周期関数 f (t) について、
f (t) =
フーリエ級数展開
a
0
2
+
n=1
a
n
cos
2πnt
T
+ b
n
sin
2πnt
T

が成り立つとしたら、フーリエ係数 a
n
, b
n
は次のようになる。
a
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) cos
2πnt
T
dt
b
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) sin
2πnt
T
dt
角周波数を使った表現
角周波数 ω
0
=
2π
T
を使って、フーリエ級数展開の式を書き換えることもできる。
フーリエ級数展開(角周波数を使った表現)
周期 T の周期関数 f (t) について、角周波数 ω
0
を用いて、
f (t) =
フーリエ級数展開
a
0
+
n=1
(
a
n
cos ω
0
nt + b
n
sin ω
0
nt
)
1.5.
フーリエ級数 17
が成り立つとしたら、フーリエ係数 a
0
, a
n
, b
n
は次のようになる。
a
0
=
1
T
T
2
T
2
f (t)dt
a
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) cos ω
0
ntdt
b
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t) sin ω
0
nt dt
区間を 0 始まりにずらした表現
有限区間
T
2
t
T
2
で定義された関数のフーリエ級数展開を考えてきたが、その有限区間は区
間幅が T であればなんでもよい。
特に、0 t T で定義された関数のフーリエ級数展開を考えることも多い。
区間を変えても、周期関数への拡張は同様の議論により成り立ち、次のことがいえる。
フーリエ級数展開(積分区間を 0 始まりにした表現)
周期 T の周期関数 f (t) について、
f (t) =
フーリエ級数展開
a
0
+
n=1
a
n
cos
2πnt
T
+ b
n
sin
2πnt
T

18
CHAPTER 1.
フーリエ解析
が成り立つとしたら、フーリエ係数 a
0
, a
n
, b
n
は次のようになる。
a
0
=
1
T
T
0
f (t)dt
a
n
=
2
T
T
0
f
(
t
) cos
2πnt
T
dt
b
n
=
2
T
T
0
f (t) sin
2πnt
T
dt
このフーリエ係数の式は
T
2
t
T
2
の場合の式を平行移動+置換積分るこで示れる
1.5.7 奇関数のフーリエ級数(フーリエ正弦級数)
f (t) が奇関数の場合、それを表現するフーリエ級数には、奇関数しか入らない。
奇関数と奇関数の和が奇関数になることから、そう予想できる。
偶関数 cos の項が消え奇関数 sin の項だけが残ることを確かめるため各フーリエ係数を計算し
てみよう。
定数項 a
0
原点に対して対称な範囲での奇関数の積分は 0 になるから、
a
0
=
1
T
T
2
T
2
f (t)
d t
= 0
cos の項の係数 a
n
の中身を見ると、奇関数と偶関数の積は奇関数になるので、積分結果は 0 になる。
1.5.
フーリエ級数 19
a
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t)
cos
2πnt
T
d t
= 0
sin の項の係数 b
n
の中身を見ると、奇関数と奇関数の積は偶関数になるので、
REVIEW
偶関数の積分公式
a
a
f (x)dx = 2
a
0
f (x)dx
を使って計算する。
b
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t)
sin
2πnt
T
d t
=
2
T
· 2
T
2
0
f (t) sin
2πnt
T
dt
=
4
T
T
2
0
f (t) sin
2πnt
T
dt
まとめ:フーリエ正弦級数
以上より、a
0
a
n
0 になるため、奇関数のフーリエ級数は、sin の項だけで表現される。
奇関数のフーリエ級数は、フーリエ正弦級数と呼ばれる。
フーリエ正弦級数
20
CHAPTER 1.
フーリエ解析
周期 T の周期関数 f (t) が奇関数であり、
f (t) =
フーリエ正弦級数
n=1
b
n
sin
2πnt
T
が成り立つとしたら、フーリエ係数 b
n
は次のようになる。
b
n
=
4
T
T
2
0
f
(
t
) sin
2πnt
T
dt
1.5.8 偶関数のフーリエ級数(フーリエ余弦級数)
f (t) が偶関数の場合、それを表現するフーリエ級数には、偶関数しか入らない。
偶関数と偶関数の和が偶関数になることから、そう予想できる。
奇関数 sin の項が消え偶関数 cos の項だけが残ることを確かめるため各フーリエ係数を計算し
てみよう。
定数項 a
0
偶関数の積分公式を使って計算する。
a
0
=
1
T
T
2
T
2
f (t)
dt
=
1
T
· 2
T
2
0
f (t)dt
=
2
T
T
2
0
f (t)dt
cos の項の係数 a
n
の中身を見ると関数と偶関数の積は関数になるので、偶関数の積分公を使って算する。
1.5.
フーリエ級数 21
b
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t)
cos
2πnt
T
d t
=
2
T
· 2
T
2
0
f (t) cos
2πnt
T
dt
=
4
T
T
2
0
f (t) cos
2πnt
T
dt
sin の項の係数 b
n
の中身を見ると、偶関数と奇関数の積は奇関数になるので、積分結果は 0 になる。
b
n
=
2
T
T
2
T
2
f (t)
sin
2πnt
T
d t
= 0
まとめ:フーリエ余弦級数
以上より、b
n
0 になるため、偶関数のフーリエ級数は、cos の項だけで表現される。
偶関数のフーリエ級数は、フーリエ余弦級数と呼ばれる。
フーリエ余弦級数
周期 T の周期関数 f (t) が偶関数であり、
f (t) = a
0
+
フーリエ余弦級数
n=1
a
n
cos
2πnt
T
22
CHAPTER 1.
フーリエ解析
が成り立つとしたら、フーリエ係数 a
0
, a
n
は次のようになる。
a
0
=
2
T
T
2
0
f (t)d t
a
n
=
4
T
T
2
0
f (t) cos
2πnt
T
dt