Chapter 1
指数関数と対数関数
1.1 指数関数
1.1.1 同じ数のかけ算の指数による表記
指数と底
同じ数 a n 回掛けたものを a n 乗といい,a
n
と表す。
a
n
= a × a × ··· × a
| {z }
n 個の a
このとき、n を指数、a を底という。
1.1.2 指数法則
指数を「かける回数」と捉えれば、いくつかの法則が当たり前に成り立つことがわかる。
「かける回数」の和
例えば、a m 回かけてから、続けて a n 回かける式を書いてみると、a m + n 個並ぶことに
なる。
a
3
z }| {
a × a × a ×
a
2
z}|{
a × a =
a
5
z }| {
a × a × a × a × a
1
2
CHAPTER 1.
指数関数と対数関数
指数の和に関する指数法則
a
m
× a
n
= a
m+n
「かける回数」の差
例えば、a m 回かけたものを、a n 回かけたもので割ると、m n 個の a の約分が発生する。
a
5
z }| {
a × a × a × a × a×
a × a
|{z}
a
2
=
a
3
z }| {
a × a × a
指数の差に関する指数法則
a
m
a
n
= a
mn
「かける回数」の積
例えば、a m 回かけたもの」を n 回かける式を書いてみると、a m × n 個並ぶことになる。
(a
2
)
3
=
a
2
z}|{
a × a ×
a
2
z}|{
a × a ×
a
2
z}|{
a × a
| {z }
a
6
指数の積に関する指数法則
(a
m
)
n
= a
mn
1.1.3 指数の拡張と指数関数
底を固定して、指数を変化させる関数を考えたい。
指数部分に入れられる数を拡張したいが、このとき、どんな数を入れても指数法則が成り立つよ
うにしたい。
1.1.
指数関数 3
0 の指数
指数法則 a
m
× a
n
= a
m+n
において、m = 0 の場合を考える。
a
0
× a
n
= a
0+n
a
0
× a
n
= a
n
この式が成り立つためには、a
0
1 である必要がある。
0 の指数
どんな数も、0 乗すると 1 になると定義する。
a
0
= 1
そもそも、指数法則 a
m
× a
n
= a
m+n
は、「指数の足し算が底のかけ算に対応する」ということを表
している。
「何もしない」足し算は +0
「何もしない」かけ算は ×1
なので、a
0
= 1 は「何もしない」という観点で足し算とかけ算を対応づけたものといえる。
負の指数
指数法則 a
m
× a
n
= a
m+n
において、正の数 n を負の数 n に置き換えたものを考える。
a
m
× a
n
= a
mn
さらに、指数法則
a
m
a
n
=
a
mn
も成り立っていてほしいので、
a
m
× a
n
=
a
m
a
n
この式は、a
n
=
1
a
n
とすれば、当たり前に成り立つものとなる。
4
CHAPTER 1.
指数関数と対数関数
負の整数の指数
n が正の整数であるとき、n 乗を次のように定義する。
a
n
=
1
a
n
有理数の指数
指数法則 a
m
× a
n
= a
m+n
において、指数 m, n
1
2
に置き換えたものを考える。
a
1
2
×
a
1
2
=
a
1
2
+
1
2
=
a
a
1
2
× a
1
2
は、(a
1
2
)
2
とも書けるので、
(a
1
2
)
2
= a
つまり、a
1
2
は、2 乗すると a になる数(a の平方根)でなければならない。
a
1
2
=
a
同様に、a
1
3
× a
1
3
× a
1
3
を考えてみると、
a
1
3
× a
1
3
× a
1
3
= a
1
3
+
1
3
+
1
3
= a
a
1
3
× a
1
3
× a
1
3
は、(a
1
3
)
3
とも書けるので、
(a
1
3
)
3
= a
つまり、a
1
3
は、3 乗すると a になる数(a 3 乗根)でなければならない。
a
1
3
=
3
a
このようにして、a
1
n
は、n 乗すると a になる数(a n 乗根)として定義すればよい。
a
1
n
=
n
a
1.1.
指数関数 5
さて、分子が 1 ではない場合はどうだろうか?
(a
m
)
n
= a
mn
において、m
m
n
に置き換えたものを考えると、
(a
m
n
)
n
= a
m
n
×n
= a
m
となるので、a
m
n
は、n 乗したら a
m
になる数として定義すればよい。
a
m
n
=
n
a
m
有理数の指数
m, n が整数で、n が正の整数であるとき、
m
n
乗を次のように定義する。
a
m
n
=
n
a
m
実数への拡張
有理数は無数にあるので、指数 x を有理数まで許容した関数 y = a
x
のグラフを書くと、十分に繋
がった線になる。
指数が無理数の場合は、まるでグラフ上の点と点の間を埋めるように、有理数の列で近似してい
くことで定義できる。
これで、x を実数とし、関数 y = a
x
を定義できる。
指数関数
a を正の実数とし、x を実数とするとき、次のような関数を指数関数という。
y = a
x
1.1.4 指数関数の底の変換
用途に応じて、使いやすい指数関数の底は異なる。
e:微分積分学、複素数、確率論など
6
CHAPTER 1.
指数関数と対数関数
2:情報理論、コンピュータサイエンスなど
10:対数表、音声、振動、音響など
よって、これらの底を互いに変換したい場面もある。
指数の底を変えることは、指数の定数倍で実現できる。
例えば、底が 4 の指数関数 4
x
を、底が 2 の指数関数に変換したいとすると、
4
x
= (2
2
)
x
= 2
2x
のように、指数部分を 2 倍することで、底を 4 から 2 へと変換できる。
当たり前だが、この変換は、4 = 2
2
という関係のおかげで成り立っている。
4 2 の何乗か?」がすぐにわかるから、4 から 2 への底の変換が簡単にできたのだ。
より一般に、a
x
b
X
において、a = b
c
という関係があるとする。
つまり、a b c 乗だとわかっているなら、
a
x
= (b
c
)
x
= b
cx
のように、底を a から b へと変換できる。
指数関数の底の変換
指数を定数倍することは、底を変えることと同じ操作になる。
a = b
c
という関係があるなら、次の変換が成り立つ。
a
x
= b
cx
ここで重要なのは、指数関数の底を変換するには、a b の何乗か?」がわかっている必要があ
るということだ。
次章では、a = b
c
となるような c を表す道具として、対数を導入する。
1.2.
対数関数 7
1.2 対数関数
1.2.1 対数:指数部分を関数で表す
指数関数は、a x 乗したら y になる」という関係を表現するものだった。
ここで、逆に「y a の何乗か?」という関係を表現するものとして、対数関数を定義する。
これは、y から x を導き出す関数であるから、指数関数 y = a
x
の逆関数といえる。
対数
a
y
= x を満たす y を、a を底とする x の対数といい、次のように表す。
y = log
a
x
ここで、x は真数、a は底と呼ばれる。
対数関数は指数関数の逆関数
対数関数 y = log
a
x は、指数関数 x = a
y
の逆関数である。
log
a
x = y a
y
= x
対数は、指数関数の指数部分を表す。
a
y
= x y に、y = log
a
x を代入することで、次のような式にまとめることもできる。
指数部分は対数で書き換えられる
a
log
a
x
= x
1.2.2 対数の性質
指数法則を対数に翻訳することで、対数の性質を導くことができる。
8
CHAPTER 1.
指数関数と対数関数
真数のかけ算は log の足し算
x
1
= a
m
, x
2
= a
n
として、指数法則 a
m
× a
n
= a
m+n
を考える。
x
1
x
2
= a
m
× a
n
= a
m+n
対数は指数部分を表すので、m + n = log
a
(x
1
x
2
) がいえる。
また、x
1
= a
m
より m = log
a
x
1
x
2
= a
n
より n = log
a
x
2
と表せるから、
m + n = log
a
x
1
+ log
a
x
2
= log
a
(x
1
x
2
)
積の対数は対数の和
log
a
(x
1
x
2
) = log
a
x
1
+ log
a
x
2
真数の割り算は log の引き算
x
1
= a
m
, x
2
= a
n
として、指数法則
a
m
a
n
= a
mn
を考える。
x
1
x
2
=
a
m
a
n
= a
mn
対数は指数部分を表すので、m n = log
a
x
1
x
2
!
がいえる。
また、x
1
= a
m
より m = log
a
x
1
x
2
= a
n
より n = log
a
x
2
と表せるから、
m n = log
a
x
1
log
a
x
2
= log
a
x
1
x
2
!
1.2.
対数関数 9
商の対数は対数の差
log
a
x
1
x
2
!
= log
a
x
1
log
a
x
2
真数の冪乗は log の指数倍
x = a
m
として、指数法則 (a
m
)
n
= a
mn
を考える。
x
n
= (a
m
)
n
= a
mn
対数は指数部分を表すので、mn = log
a
x
n
がいえる。
また、x = a
m
より m = log
a
x と表せるから、
mn = n log
a
x log
a
x
n
冪の対数は対数の指数倍
log
a
x
n
= n log
a
x
1.2.3 常用対数と桁数
Under construction...
常用対数 底を 10 にした対数関数を、常用対数と呼ぶ。
log
10
x
10
CHAPTER 1.
指数関数と対数関数
1.2.4 指数関数の底の変換:対数を用いた表現
指数関数の底 a から b に変換するには、a b の何乗か?」がわかっている必要があった。
REVIEW
a = b
c
という関係があるなら、
a
x
= b
cx
今では、a = b
c
となるような c を、対数で表すことができる。
b
c
= a c = log
b
a
指数関数の底の変換公式
a
x
= b
(log
b
a)x