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CHAPTER 1.
複素数と複素関数
1.3 複素数の演算
ベクトルとの対応や極形式をもとに、複素数の演算を定義していこう。
1.3.1 複素数の和と差
複素数の和・差は、ベクトルの和・差と同じように定義される。
複素数の和と差
複素数 z = a + bi, w = c + di について、z と w の和(差)を次のように定義する。
z ± w = (a ± c) + (b ± d)i
つまり、実部同士・虚部同士の足し算(引き算)を行えばよい。
実部同士を足したものが実部になり、虚部同士を足したものが虚部になる。
この定義は、実部と虚部を並べたベクトルの和(差)と一致している。
a
b
±
c
d
=
a ± c
b ± d
1.3.2 複素数の積
複素数の積は、ベクトルの演算から定義をそのまま流用することはできない。(そもそも、ベクト
ルの積とは何か?という問題になる。)
複素数のかけ算で成り立っていてほしい性質は、−1 をかける操作が 180 度回転であることや、i を
かける操作が 90 度回転であることだ。
というわけで、複素数の積は回転を表すものとして定義したい。
回転行列から定義を探る
複素数 z = a + bi の実部と虚部を並べたベクトル
(
a
b
)
を、原点を中心に θ だけ回転させたベクトル
は、2 次元の回転行列を左からかけた形で次のように表せる。
cos θ −sin θ
sin θ cos θ
a
b
=
a cos θ − b sin θ
a sin θ + b cos θ